チャンスの前髪をつかみ損ねた話

高校3年でアメリカの大学へ進路を決めたとき、帰国子女の友達に「日本人の女の子って人気があるよ。Yに金髪碧眼のカッコイイ彼氏ができたら、必ず教えてね!」と激励の言葉を受けた。


確かにアメリカの男性は紳士が多い。手荷物をたくさん抱えていてもドアを開けて先に女性を通すし、列に並ぶときもレストランの注文の際もまず女性に勧める。レディー・ファーストの文化が芯から身についているのだろうから、慣れていない日本人女性は初めは勘違いをするのも、頷けないこともない。当然それは「人気がある」とは違う。


あちらで生活して悟ったのは「特別に日本人女性が人気なのではなく、人気がある人が人気があるのである。」という当たり前のことだった。そういえば一ヶ月ほど一緒に語学学校に通っていた目の大きな九州出身の女の子は、南部の大学に入学したのだけど、アメリカ人の男子生徒にもの凄く人気だと噂で聞いた。筋の通らないことが嫌いではっきりものを言う子だった。私たち同じ語学学校出身の同期生は互いに情報交換して、アメリカでモテる女性を「強くて積極的で、自分に自信がある人」だと結論づけた。どうやら堂々とした女性が最も魅力的に見えるようだ。若さと可愛らしさを求めがちな日本とは根本的に文化が異なる。

私は「なるほど、どうりで」と思った。「強くて積極的で、自分に自信があること。」という条件は自分にはまるで当てはまらなかったからだ。キャンパスライフは英語が話せなかったので人の集まりに行くことに敬遠気味だったし、流暢に話せない自分がもどかしくて恥ずかしくて、自信を持つことなど出来なかった。


そんな理由で、帰国子女の友人の期待に反して、残念ながら、私のアメリカンライフにおいて、恋物語など生まれるはずはなかったのである。


‥多分。



(もしかすると続く)