事実は小説よりも。 【大学編②】2024.05.15 21:00友人の曇った表情を見て、なんとなく悟ってしまった。多分、彼にはつきあっている人がいるのだろうと。間違っていなかった。梨花いわく、ひと月ほど前からその人にはいつも一緒の女の子がいるとのこと。彼女も同じサークルらしい。「私さ、」梨花は言った。「Yと〇〇くんのことをずっと聞いてたから、...
事実は小説よりも。【大学生編①】2024.05.12 21:00気まずくなることを覚悟していたけれど、特に大きな変化はなかった。これは、バイトの仲間たちのゆえだったと思う。なんとなく状況が伝わっていたようだった。彼らの気遣いのお陰で、私とその人が困ることはほとんどなかった。数週間もすると、ほぼ元通り話せるようになった。4月を迎え、その人は大学...
事実は小説よりも。【バイト編②】2024.05.12 06:30話しはちょっとだけ変わって、先に友人の梨花(りんか)について書きたい。梨花は同級生で、帰国子女だった。大らかで優しい性格をしていた彼女と私は、意外と気が合った。同じクラスになったことは一度きりだったけれど、卒業式の後、なんとなく帰りたくなくて、駅周辺で食事をしたりカフェでいつまで...
事実は小説よりも。 【バイト編①】2024.05.01 21:00コンビニのスタッフは店長と社員1人を除いて、全てが学生だった。私と同じ頃にアルバイトに入ったスタッフは6人。全員が同い年。高校を卒業後は大学と専門学校に行くのがそれぞれ2人ずつで4人、就職するのが1人、そして私(留学)だった。6人とも平日か週末の午後から夕方、あるいは夕方から深夜...
事実は小説よりも。【高校生編②】2024.01.21 21:00季節は巡り、高校3年生の夏となったけれど、手紙のやりとりは続いていた。この頃になると、進路の話題が多くなる。高校教師を目指していた私は、学内推薦でC大学の国文学科を狙っているという話をちらりとした。その理由に『今小論文を教わっているのが、すごく尊敬している先生で、私もこんな教師に...
事実は小説よりも。 【高校生編①】2024.01.20 19:15私は、不器用な高校生だった。学業も、友人関係も、将来の設計も、すべてにおいて自分が上手くやれると思えたことがなかった。この連載を書きながら、理想と現実の狭間でもがいていたあの頃の自分を思い出している。けれど、それらはもはや、苦い思い出ではない。今ならば必死だった過去の自分に「よく...
事実は小説よりも。【中学生編②】2024.01.18 22:00その人と私には、わかりやすい共通点がなかった。運動部と文化部。委員会が同じになることもなかった。だからクラスが離れてしまったら、コンタクトを取る理由を見つけることができなかった。私がその人を見るのは、たまにクラスの違う友人に用事で会いに行ったときや、学年集会で体育館に集まるとき。...
事実は小説よりも。【中学生編①】2024.01.15 23:00中学生になったとて、何かが変わることもないだろう。と思っていた。小さな田舎町では、小学校の同級生がそのまま中学校に上がる。まぶたが腫れるほど泣き、別れを惜しんだ卒業式の3週間後、見慣れた顔と中学校で再会するのだ。何を目新しく感じられるというのだろう。しかし、入学式の朝、真新しい制...
事実は小説よりも。【小学生編】2024.01.14 23:00事実は小説よりも奇なり、という言葉がある。世の中にあふれる恋愛ドラマや映画は「こんな偶然あるわけない!」という設定で満ちている。しかし、あなたはご存じだろうか。時に、小説より脚本よりもっと、日常が不思議と奇跡を見せてくれることを。これから記すのは、私が経験した、十数年に及ぶ『事実...
続・私はフローラ派である2023.09.08 23:00以前この記事で「私はフローラ派」と書きかけていたのだけれど、肝心なことに触れていないままだったので、続けます。なお今回は「ドラクエ5に何一つ興味がない」という方にはものすごく退屈な記事です。すみません。(ゲームの内容についてはこちらなどを参考に)。ゲーム内のイベントで花嫁を選ぶ際...
Happily Ever After の先に2023.08.28 00:00アマゾンプライムで映画「リトル・マーメイド」を発見しました。6月に公開された映画です。元々好きなアニメの実写化だったため、公開時に映画館に走りました。海の底の生き物たちのダンスの美しさと、陸の上のラテンアメリカを思わせる陽気な城下町が印象的でした。もう一度、タブレットで観ようかな...
異国で日本語を教えた時のこと⑤2023.08.22 00:00↑続きです。日本語講座には最終的には6〜7名が集うようになっていた。そして3ヶ月後、最初の取り決め通り、無事終焉を迎えた。最後のレッスンが終わってから。充実感と共に図書館を後にし学生寮に帰ろうとした時、ケイレブが「Y、送っていくよ」と来てくれた。並んで歩きながら改めて「楽しい時間...