夢から醒めた恋④

私の「ショウさんの妹」としての立場は定まったかのようだった。


変わらず週に2,3回はメールの往復があり、月に1,2回はショウさんからの電話があった。私はアキさんの手前、いやむしろリカさんの存在を思うと、自分の恋心は絶対に明かすまい、と決めていた。


リカさんには一度だけ顔を合わせたことがある。アキさんに軽く紹介されて会釈をしたくらいだったが、ロングヘアの涼しげな目元をした大人の女性という印象の人だった。私は格好つけていたのではなく、本気でショウさんとリカさんがいつまでも仲むつまじくいて欲しかった。なぜならリカさんはショウさんにとって大切な人だから。そしてショウさんは私にとって大切な人。もちろん、片思いを辛く感じる気持ちはあったけれど、それ以上に彼が幸せであって欲しいと願ったのだ。それが「妹」としての役目ではなかろうかとも。


ある日カジュアルな服をメインに売るショップを通りかかった時のこと。ディスプレイされているジャケットに目がとまった。それはショウさんがよく着ているものと酷似していた。私はそれを自分のサイズで購入した。ショウさんとはサイズ違いのお揃いだ。誰かに気づかれることではないし、そもそもお揃いですらないのだが、そんなことでワクワクしたことを覚えている。


が、帰宅して鏡の前で袖を通してみると、ふいに胸がギュッと詰まった。報われない思いを抱えることは決して楽しいものではない。ショウさんの前では明るくて茶目っ気のある妹キャラを演じているけれど、本音を隠して思いを偽ることは一体何のためになるのだろう、と急に虚しくなったのだ。


でも、と思い直す。自分の我慢がいつか彼の幸せになるならそれでいいじゃないかと。

ちょうどその夜、ショウさんからの電話が鳴った。


次回で最後。夢から醒めた恋の話し。

(続く)

Be ambitious, dear friends.

現役英語講師の頭の中。