近所の100円均一ショップ(実はもう100円でも均一でもないが)に出かけたところ、ハロウィングッズが所狭しと飾られているのに気が付いた。
トリックオアトリート、という子供たちが仮装して近所の家々を回り、お菓子をもらうというイベントは日本ではまだそこまで浸透してはいないと思う。アメリカで菓子袋に入りきらないほどのキャンディーを貰ったのが楽しかったと覚えている。
日本に帰ってからはキャンディを渡す側になりたいと思った。ドラマでよく見かける「ピンポーン」とチャイムが鳴って、家の人が玄関に出たら、仮装をした子供たちが「トリックオアトリート!」と叫ぶ。それで大げさに「きゃあ、怖い!大変、いたずらされるのは困っちゃう!トリートするから、どうかやめてね!」とかなんとか、怖がる演技をして、子供たちにキャンディをたっぷりひとつかみつつあげるのだ。ああ、やってみたい。ひそかな憧れだ。
そしてなんと私の憧れが現実になる日が来たのである。数年前の10月31日。仕事が休みだったので、暇に任せて私はインターネットサーフィンをしていた。時は夕方の4時半頃。突然玄関のチャイムが鳴った。玄関の扉を開けるとそこには、小学4年生くらいの女の子が二人立っている。二人とも女の子らしい私服だ。私は「回覧板でも持ってきたのかな?」と思い「どうしたの?」と声をかけた。すると、一人が思い切ったように「あの、トリックオアトリート。」と言い、もう一人が「ええっと、お菓子をくれなきゃいたずらするぞ。」と言った。面食らったが、どうやらこの子たちはハロウィンをしているらしいと気づいた。「あ、ハロウィンね。わ、わかった!」と私はなぜか焦りながら、「ちょっと待ってて。」と二人を玄関に残して家にひっこんだ。夢にまで見たシチュエーションのはずなのに、何かが違うと思った。が、とにかく、お菓子をあげねばならぬ。
あいにく菓子箱には何も入っていなかった。正確に言うと、ダイエット用プロテインバーは入っていたけれど、さすがにそれをあげるのは気が引ける。冷蔵庫を覗いてもチーズくらいしかない。それをあげるのも憚(はばから)れる、というかお菓子じゃないし…。どうしようかとしばし悩んだ。ちらとキッチン台のカゴを見る。いいことを思いついた。
女の子たちの元へ戻った私はそれをひとつずつ渡してあげた。ひとりは「え、リンゴ!いいの!?」と驚き、もう一人は「わぁ、ありがとう!!」と言った。そして2人はニコニコと笑顔でさようならと言い、去っていったのである。私は「どういたしまして、またねー。」と見送ってから玄関の扉を閉める。リンゴは前日に母からもらったものだったのだ。ホッとした。でも、あー驚いた。夢に見た「トリックオアトリートでお菓子をあげる体験」がこんなに急にやってくるとは。しかしあの二人はなぜこの家に来たのか。いろいろと疑問が沸いて来たが、とりあえず決意したことがある。今後は10月末にお菓子を切らさないようしよう、と。
それにしてもあの二人、トリックオアトリートをするのであればせめて仮装はして来なよ、と今では思う。
Be ambitious, boys and girls!
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