単独で行動できる人になれ

「人は群れるほど、醜くなる。」とは私のかつての恩師の言葉である。


部活動や会社のように、チームワークを必要とする集団のことではない、「プライベートで群れたがる人」のことである。なかなかに大胆な物言いだと思う。


しかしながら日本人は和を以て尊しと成す民族である。太古の昔から村単位で稲作を行い、集団で和を保つことを大切にしながら生活してきた。だから、何かを一緒にすることに安心を覚えやすいのだと思う。


こんなジョークを聞いたことがある。各国の人が乗った船が沈没しかけたので、救命胴衣をつけて海に飛び込まなければならなくなった。それぞれの国の乗客達を説得するために、船長は次のように言ったそうな。アメリカ人には「飛び込んだらヒーローになれますよ。」、イギリス人には「紳士はこういうときに飛び込むものです。」、ドイツ人には「規則では飛び込むことになっています。」、フランス人には「飛び込まないでください。」、ロシア人には「最後のウォッカが流れていきましたよ。」、そして日本人には「みなさんもう、飛び込みましたよ。」だそうだ。このように説得されて反論できる日本人は少数派だろう。国民性ジョーク、さもありなん、である。


前述の恩師は高潔な方だった。専門のアートを通して生徒たち(子供から大人まであらゆる世代)の教育に尽力を注がれるような方で、どの世代にも尊敬される先生だった。だからといって偏屈で変わり者だったわけではない。それでも恩師が人と群れる姿はほとんど見たことがなかった。恩師曰く、人は集団で群れるほど厚かましく、やかましく、ネガティブになるそうだ。確かに、日がな配偶者の愚痴や他人の噂話に興じている集団を社会のあらゆる場所で見かける。ゆえに恩師の言うことは一理あると思うのである。


僭越ながら恩師の言葉に少し付け加えさせて貰うなら、私は「単独で行動出来る人になれ。」と生徒達に伝えたい。単独行動、すなわちひとりで居られる人だ。そういう人は凜としている。凜としている人は、ひとりでいることを楽しめて、ひとりでいることを恐れない、芯の強い人だ。


そして、こういう人には、同じく、凜とした友人が出来る。自信を持っているけれど謙虚さを忘れない、あなたをあなたのままで認めることが出来る、そんな友人が。

これは、紛うことなき真実である。


Be ambitious, boys and girls!