初バイトのもうひとつの思い出。
私の仕事は店内で品出しをしたり、野菜や果物を運んで陳列したり、掃除をしたり、様々なことをしたけれど、一番印象に残っているのは、お正月グッズをたたき売りしたことだろう。大晦日までの五日間だけのアルバイトの期間、しめ縄とか、鏡餅とか、門松の材料とか、お正月の品がスーパーの入り口付近の何台ものワゴンに陳列されていた。年末が近づくにつれ飛ぶように売れた。私はパーカーにデニム姿でスーパーのエプロンを着けただけの付け焼き刃販売員だったけど、売り込みはめちゃめちゃ楽しかった。
「はい、らっしゃい、らっしゃい!お正月グッズはこちらですよ!ほ~ら、そちらのご主人さま、お正月のしめ縄はもうお買い求めになりました?あらら、まだですか、そりゃいけない。しめ縄がないと幸せなお正月は来ないよ。ここで買ったら安全安心、ハッピー満点の新年が迎えられるよ、おひとついかが?おっと、お隣の奥さまには小さめの鏡もちなんていかでしょう。可愛くてお子様も大喜び、さあどうぞ!」
とかなんとか、半日中声を張り上げてお正月グッズを売って、売って、売りまくった。果てしなく「オヤジ感」にあふれた呼び込みだが、やむを得ない。だって、私の営業トークの見本となったのが50代の店長だったのだから。しかし、どう見ても15、6歳の女の子が声をからしてお正月グッズをたたき売っている様子は、お客に受けた。ゆえに「おネエちゃん、ほんま?これ買ったら、幸せくるかね?」「あんたおもろいな。ほなこっちとそっち、もらうわ。袋入れてんか。」と面白がって買ってくださった方が結構いた。楽しかった。
かくして私のアルバイトは終了した。
いただいたお給料は五日間で占めて4万5千円也。私にはものすごく大金だった。また、自分が頑張って得た給与だと思うと本当に嬉しかった。私はこの時、初めて働く楽しさを感じたように思う。有り難いことに翌年、スーパーの店長から「また今年も来てくれはるやろか?」とオファーをいただいたので、私の年末アルバイトはもう1回続くことになったのだ。その話しはまた、いずれ。
完
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