異国で日本語を教えた時のこと③

↑の続きです。

「バリバリ関西アクセントでリピートさせてるんだもん、笑っちゃった」とミキさんに指摘された私だけど、もう開き直ってしまった。だってどうしようもなくない?

随分のちになって(というか比較的最近のことだけど)私は司会業をほんの少し齧ることになり、その際日本語の発音のトレーニングを受けたから、関西弁を意図的に外せるようになった。でも、当時は指摘されても「そもそも私の話し言葉のどこに関西アクセントがあるのか」を気づくことは、難しかったなぁ。なぜか、関西弁って他の地域ことばに比べると意識するのが難しい気がしませんか?

こんな風にボランティアの日本語講座はちょくちょく続いた。N大の図書室の一角は木曜日になると、日本語(made in 関西)が聞こえる、ちょっと不思議な空間になった。レッスン自体は30分ほどと短かったけど、真剣に日本語の発音を繰り返すアメリカ人とそれを真面目に指導する日本人がいる、空間。

こんなことがあった。
ある日のレッスン中、私たちのそばを通りかかった人がいる。ジュニア(3回生)のウィルとクリスタル。2人ともケイレブと仲が良く、確か東京アウトリーチに一緒に行ったはず。

ウィルが私たちに声をかけた。「Hi Y! Hey bro, what’s up?」何をしているのか、との問いに、ケイレブはテキストのとあるページを開き、そこにある文章を日本語で読み上げた。「ワタシはニホンゴを、ベンキョウしています。」ウィルは訳を覗き込んで、へーCoolだな!とかなんとか。そして今度は私に「Are you his teacher?(君が先生?)」と問う。なので、私は「Yes! And my student is super clever!」そうだよー、彼はすごく優秀な生徒なんだと答えた。

ウィルはケイレブのテキストをちょっと取り上げ、パラパラとめくる。あるページを開き、振り仮名が打たれた日本文をゆっくり読み上げた。「ジャ、ベンキョウ、ガンバレヨ!」

ケイレブはすかさず答えた。「アー、ドウモ、アリガトウ!」「ジャアナ」「またナー」「Bye.」えー!短いけどちゃんと日本語で会話している!もしや教師冥利につきるってこのこと?なんて感じたりした。


次の木曜日。
いつもの時刻に図書館に着いた私はちょっと驚くことになる。なんとそこには、ケイレブに加えてウィルとクリスタルが座っていたのだから。「今日から私たちも習います!先生、よろしくお願いします!」と2人。びっくり、そうなの?

そんなわけで、私の日本語講座には新しいメンバーが増えることになったのだ。(続く)