「モデルって何だと思う?」という問いかけに答えた日③

界隈ではトップクラスの技術者を育てることで有名な美容専門学校「B」がある。


「B」では毎年、在校生によるヘアファッションショーが開催される。学生が中心になるといっても学芸会レベルではない、プロの手が入る一流のショーである。ヘアデザインやアレンジはもちろん、ストーリー性のある世界観や舞台演出が効果的に企画され、若きスタイリストたちが、自らの技術とアイディアを出し切り、光と影と音とプロモデルをふんだんに使い、作り上げる舞台はまるで夢のようで圧倒されたものだ。


その「B」のヘアショーのオーディションがあるので行くのよとマネージャーから告げられた。モデルとしては鳴かず飛ばずの私だったが「これは合格したい!」と強く思った。なぜなら、事務所「K」に来たのは「ブライダル部門」のオーディションだったからだ。私はブライダルショー特有のハッピーさと明るさが非常に好きだった。他の仕事も楽しかったけれど、ブライダルが一番したい仕事だった。なぜなのか、その理由は、実はこのオーディションに通って初めて分かったことなのだけど…。


とにかく「K」からは6名がオーディションに行くことになった。どうやら他の事務所やエージェンシーのモデルも集められる一斉オーディションらしい。それまでひとり、あるいはマネージャーを含め3人ほどのオーディションばかりに参加していた私は、驚いた。いったい何十人のモデルがオーディション会場にいるのか、どんな形式でオーディションが行われるのか、最終的にはどれだけが採用されるのか、想像がつかなかったからだ。ただ、これまでとは異なり、相当に大きな規模だということはなんとなく理解した。


オーディションの条件は、「ミニスカートならびにホットパンツ等の足見せのスタイルで。髪はアップ。10cm以上の黒パンプス。厳しいウォーキング審査あり。出来ない人は要りません。」とのこと。季節はまもなく初夏になろうというころだった。


かくして私は、シンプルな半袖のカットソーに、ひざ上10cmのややタイトなミニスカート、黒いパンプスに髪を大き目のクリップで結いあげて、オーディション会場に向かった。緊張で、心臓が飛び出してきそうなほど、バクバクと大きな音を立てるのを感じた。


Be ambitious, boys and girls!

(続く)

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