常夏の島グアムに行った時のこと。
などと書き出すと、グアムでの思い出を記すように聞こえるけれど、私が今日書こうとしているのはちょっと違う。だが、一番伝えたいことにたどり着くまで、とりあえず聞いてほしい。
26歳の頃、グアムに初めて訪れた。日本から一番近いアメリカである(正確には準州)グアムは南国特有のまぶしい太陽と美しい海を持った島である。ハワイほど都会ではないが、住む人々は明るくて親切でどこかのんびりとしている。町は美しくて安全。バカンスを楽しむ旅行にぴったりの国だ。出発した時期は3月半ばを少し過ぎた頃、まだ日本では寒風が吹きすさんでいた。厚いジャケットを身にまとい、それでも震えながら飛行機に乗り込んで、数時間後に到着する南の島に思いを馳せた。
始めてのグアムはとにかく楽しかった。まるで空を映しているのではないかと見まがうほど透明度の高い美しい青い海をたっぷり堪能した。マリンスポーツにトライして、家族や友人へのお土産に可愛い雑貨店をふんだんにショッピングして回った。そして、美味しいものをたらふくいただいた。夢のような1週間であった。
しかし夢は終わりを告げる。必ず目覚める時が来るのだ。実はグアムの前、私の人生にとある大きな変化があったため、帰国後はそれまでの生活が180度変わることが分かっていた。だが、果たして新しい生活で自分は上手くやっていけるのだろうか。不安だった。心の内では帰りたくなかった。私の不安をよそに飛行機は日本の空港へ着陸する態勢に入ったようだった。
その時である。機長のアナウンスが聞こえた。
「皆さま、本日は当機をご利用いただきありがとうございました。まもなく、関西国際空港に到着いたします。現地の時刻は△時△分、気温は××度。春らしく心地のよい暖かさです。実はこの2,3日で桜が咲き始め、まもなく満開を迎えようとしています。皆さまがお帰りの時、美しい桜をご覧になることでしょう…」
機長の声を聞いて私の心に浮かんだものがあった。とても不思議なことに、悩みや心配事が何一つ解決したわけではないのに、突如心の中に一筋の光が差し込んだのだ。そうか、桜が満開なのか。きっと綺麗だろうな、早く見たいなという。出発する前はあれほど凍てつく寒さに満ちていた日本に、今は美しく暖かい季節が訪れている。帰りたいと思った。
私の心に浮かんだもの。どんなに冬が長くても必ず春が来るという「希望」だった。機長のアナウンスは何気ないものだったに違いない。しかしそれこそが私に、新生活への勇気を奮い起こさせてくれたのだった。人は誠実に生きているだけで、誰かを救うことがある。
あの日新婚旅行を終えて帰国した自分は、幸い、今に至るまで穏やかな結婚生活を送ることが出来ている。
Be ambitious, boys and girls!
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