一昨日、気づいたことがある。
私の職場には一本のキンモクセイが立っているのだが、そばを通った時にハッとした。キンモクセイが良い香りを放っていたのである。毎年、その時期は急に訪れる。
キンモクセイは、金木犀と書く。濃いグリーンの葉に小さなオレンジの花がたくさん咲き、その色のコントラストが美しい木だ。江戸時代に中国から日本に伝わったらしい。当時はギンモクセイという種で、白い花をつける木だった。現在のキンモクセイは、ギンモクセイの変種である。
キンモクセイのオレンジの小さな花が咲いてから、その素晴らしく良い香りを楽しめる期間はあまり長くはない。特に雨が降ると、花は一気に散ってしまうからだ。だから、私はいい香りに気づいたら、思いっきり吸い込むようにしている。
例年通り、一昨日も突然漂う芳香で「あれ、この良い香りは、もしや‥」と顔を上げたところ、満開のキンモクセイを見た。朝夕の涼しさ、衣替え、運動会、果物、‥ 季節を感じる理由はたくさんあるけれど、私がああ本当に秋なんだなと実感するのは、キンモクセイがダントツだと思う。香りは記憶に直結しており、一瞬で懐かしさや実感、理解や感動といったものを呼び起こす。
小学校の通学路のある場所にはキンモクセイが植えられていた。登校時、そばを通る時に香る、フローラルでフルーティな匂いはまるで綺麗な大人の女の人が使っている香水のようだと思い、憧れた。我慢できずに花を少し手に取り、制服のポケットに入れたことがある。残念ながら、木から離れた花は香りを失い、放課後にはポケットの中でカラカラに乾燥してしまった。がっかりした帰り道に通ったキンモクセイは、やはり豊かな香りを放っていたけれど。
キンモクセイの花言葉のひとつは「謙虚、謙遜」である。印象的な強い香りの反面、1センチにも満たない小さな花が慎ましいからだそうだ。他にも「気高い人」とも。季節の移り変わりを知らせる秋雨が降ると、潔く一気に花を散らせるからだという。
慎ましく謙遜で潔い人。
幼い私が憧れた、キンモクセイの香りから想像した女性は、確かにそのような人だったように思う。
Be ambitious, boys and girls!
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